潔さ

2008.02.01 Fri

【2008年11冊目】
父親の品格
河北義則 (著) (ダイヤモンド社 2007年9月)
★★★★☆

硬派の父親観といったところか。配慮を欠く表現が気にならなくもないが、それが存在感・威厳のある父親なのだ、ともとれる。「何か文句あっか」の世界だ。でも、優しい眼差しも感じる。

父親の権威・権力を肯定し、親の方針を気に入らない子どもは出て行け、というあたりさすが。親の保護下にある子どもが親の言うことに従うというのは、筋が通っていると思う。たしかに、戦後の日本は丸くなりすぎたのかもしれない。自由、平等と言い過ぎ、多くのカン違いを生み出した。その結果、いまの社会はどうなったのか。父親と子どもは決して友達ではない、上下関係が基本だ、という考えに大いに賛同する。このあたり、最近「悪役」が注目されているのと関連ありそうだ。言うべきことを言わず、波風立てず安易に済ませ、いい人ぶってる人が多い(自戒を込めて)。父親は悪役を買って出ろ。

日本はとかく両極端に振れやすい社会だが、本書の言っていることは一理あると思う。まあ、自分がそんな父親の子どもという立場だったら・・・。矛盾しているかな。

子育てで期待した結果が出ることなんて稀なんだから、という達観した見方がまたいい。理想的な教育法なんかない。子どもを合理的に育てようとしても、メッセージは伝わらない。むしろ、「余分」なことや「むだ」と思われることを積極的にしたほうがいい。何が吉と出るかはわからないのだから。親の何気ない言動のほうから、子どもはより強烈なメッセージを受け取る。だから、逆に親は気を抜けない。マニュアルどおりにやるべきことだけをやっておいていい、ということでは決してない。

自らを省みて、子どもの手本となれるよう恥ずかしくない振る舞い、生き方をしたいものだ。はじめは背伸びになることがあるかもしれないが、確実に親の成長にもつながるだろう。親ができないことを、子どもに押し付けることはできない。

  1. 2008/02/01(金) 10:36:35|
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当たり前のことが難しい

2008.02.02 Sat

【2008年12冊目】
親の品格
坂東眞理子 (著) (PHP新書 2008年1月)
★★★☆☆

きわめて常識的で、道徳的な内容である。ときに、その説教臭い言い方が鼻につくという読者もいるかもしれないが、わたしにとってはハッとすることが多かった。語られている範囲は広く、子どもが生まれて、親自身が死ぬまでという長期にわたる。

以前紹介した『父性の復権』や『父親の品格』との多くの共通点がみられる。親と子どもは対等ではない、「親は親の意見を子どもに押しつけていいのです」というあたりなど。

また「一貫性」の重要性を説く。「よそはよそ、うちはうち」という考え方はいいと思うし、「よい生活習慣を身につけさせ、親の言うことには従わなければならないというくせをつけさせる」ことは大切だ。このあたりにも、前掲2冊との共通点がみられる。

「「そんなことしたら、怖いおじさんに叱られるよ」「人に笑われるよ」という叱り方は感心しません。自分の基準を明確にもち、同じ基準で叱りましょう。」(p.52)
※叱るときに、逃げ腰ではいけない。

「私は、社会生活を送るうえでの規範、ルール、常識を身につけ、しかるのちにそれから自ずとはみ出た部分、あふれてくるものが個性であり、創造力ではないかと思っています。」(p.66)
「はじめから自由に、個性尊重で育てると、反発や批判する対象が規準がなくて、かえって個性は育たないのではないか」(p.67)」
※まさに、正鵠を得た意見だと思う。

「親が先回りして、子どもが欲しがる前に「これはおもしろいだろう」「これは脳を発達させる」「これは運動能力を養う」と買っているようでは、子どもをガッツのない、欲望とエネルギーのない人間に育てることになります。人生の喜びは、自分が苦労して欲しいものを手に入れたときに得られます。」(p.25)

宣伝等に踊らされて、自分もやってしまいそうだ。絵本を50冊とかダーッと買ってしまうとか。でも、それでは、子どもの選ぶ力を奪い取ってしまうのだろう。

子育てに限らず、人としての原則とか基本を再考させてくれる良書である。

  1. 2008/02/02(土) 22:33:01|
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佐幕に思いを馳せる

2008.02.04 Mon

【2008年14冊目】
幕末・維新―シリーズ日本近現代史〈1〉
井上勝生 (著) (岩波新書 2006年11月)
★★★★☆

岩波新書「シリーズ日本近現代史」を読んだのはこれで3冊目だが、通説を覆すというのがこのシリーズの一つのテーマなのか。それに『占領と改革』もそうだったが、リベラル色が強い印象を受けた。

外国に弱腰の幕府に対して革新的な尊王志士たちが闘いを挑み、欧米列強の侵略から日本の独立を保ったという構図ではなく、江戸時代を経て成熟した民衆による伝統文化が根底にあって「開国が受け入れられ、ゆっくりと定着し、そうして日本の自立が守られた」(p.iv)という新しい見方を提示する。そこには、わたしが今まで持っていたイメージとはまったく異なる幕末像があって新鮮だった。

逆に、維新後は薩長を中心とする少数派が権力を握り、急激かつ専制的に近代国家をつくっていったわけだが、それを正当化するために、従来の見方というのは支配者にとって都合の良い歴史としてつくられたと見ることができるのかもしれない。

たとえば、開国前後に日本が植民地化される危機はどれほどあったのかという問題がある。維新後の1871年、政府要人たちが長期に欧米の視察のために日本を留守にしたという事実を挙げ、そんな対外的危機はなかったと言う。危機説もまた政治的手段として利用されたのではないのか。

幕府による開国の交渉など、著者は老練で現実的な外交を評価している。一方で、日本が黒土と化しても抗戦すべし(ただし都は守れ)という孝明天皇の認識の甘さ、神話に基づいた根拠のない強気、大国主義、むしろ条約拒否をしていたのは朝廷・天皇だったという新事実を提供する。このいざこざで威信を失った開明派と呼ばれた幕臣たちは、反対勢力(井伊大老)につけこまれ失脚に追い込まれる。結局、幕府は優秀な能吏を失い、衰退していく。

興味深かったのは、当時の民衆の様子。従来の見方では、外国人を恐れ、嫌い、警戒していたというイメージがあるが、当時の記録などから、怖気づくこともなく、堂々と欧米人と接していたことがわかる。日本人が欧米人に対して劣等感を抱くようになったのは、むしろ文明開化後に欧米文明に追いつこうとして生み出されたものだったという。それも、明治新政府が、旧体制を批判し、西洋的なものを取り入れるときに、都合の悪い古い慣習などを切り捨てる口実だったのではないか。つまり、政治的に利用されていたのが、いつの間にか人々の心に浸透してしまったとも考えられる。

実際、当時の日本は未開などではなく、成熟した文化を持っており、それが近代化に大きく寄与した。たとえば、平和な農民の請願運動が江戸末期には非常に発達していたというのも従来のイメージと違っていた。村々の寄合いを大連合に組織する仕組みがあり、実質的には村役人が政策形成に参加できた。これが江戸幕府を長続きさせた要因であったと著者はいう。しかし、この仕組みも、明治新政府では完全否定され、中央集権的国家がつくられていく。

本書を読んで考えずにはいられないのは、もし幕藩体制があのような形で完全崩壊していなければ、どうなっていたのかということだ。歴史に「もし」は禁物だが、金太郎飴のようなどこへ行っても同じ、地域の独自性がまったくない日本にはならなかったのではないか。維新後の政府はもっと平和的で、韓国や台湾への侵攻はなかったのではないか。日本独自の伝統文化を生かした国づくりができたのではないか。ちょっと飛躍し過ぎか・・・。

薩長に牛耳られた明治新政府のすべてが悪いということはあり得ないし、古いものを壊したからこそ近代化が進んだということはいえるだろう。しかし、薩長以外にも優秀な人たちが多くいたのも事実で、彼らを排除して一握りの人間だけで改革を進めたツケが、現代のどこかで出ているのではないか。この本を読んで、また違った岐路を辿ったかもしれない日本を想像してみるのも面白いと思った。

  1. 2008/02/04(月) 22:51:16|
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真剣にぶつかる

2008.02.06 Wed

【2008年16冊目】
国境なき医師団:貫戸朋子 (別冊課外授業ようこそ先輩)
NHK「課外授業ようこそ先輩」製作グループ+KTC中央出版 (編) (KTC中央出版 2000年1月)
★★★★☆

こんな授業だったら一生忘れないだろうな。自分の学校時代を振り返ってみても、印象に残っている授業はどこか普通とは違うものだった。

一線で活躍する先輩が母校の小学校へ戻り、二日ほどの授業を受け持つというNHKの番組を本にしたもの。テレビで放送された内容だけでなく、事前の打合せや「先輩」の生い立ちなども収められている。授業を実現させるまでに1年近い準備期間が必要だったそうだ。この番組はたまに見るが、それほど真面目に準備している人はなかなかいない。貫戸さんの妥協を許さない姿勢が準備期間に表れている。

授業の内容は、二つの大きなテーマについてのディベートを基調にしている。前半の「そのとき、あなたならどうする?」では、酸素ボンベがあと一本しかなく、次の補給がいつあるかわからない村で、ほとんど助かる見込みのない5歳の子どもが運ばれてきた。その酸素ボンベを使うか、他の人のために取って置くか、という設定。後半の「あなたなら、行くか行かないか?」では、自分が医者だったら「国境なき医師団」のような現場に行くのか、行かないのか。賛成派と反対派に分かれ、小学生が議論を闘わせる。

どちらも、相手を変えようとしないけど、自分の主張はしっかりとする、ぶつかるときはぶつかる、という貫戸さんの姿勢が貫かれている。事前打合せで、番組スタッフは、テレビの前でたいていの子どもたちは本音で話し合わず、大人が期待する答えをするといっていた。子どもたちはかなり白熱した議論をしていたようだったが、どうだったのか。また、ボランティアとか国際協力とかいっても、究極的には自分のため、学ばせていただくために行くのだ、行ってみるとむしろ受けとることのほうが多い、といったことは、子どもたちに伝わったのだろうか。

番組製作スタッフが同窓会をやりたいと言っていたが、たしかにこの授業を受けた子どもたちがその後どんな道へと進んでいったのか楽しみでもある。長く一緒にいる先生よりも、ひょっとしたら2日間の特別授業が子どもの人生を大きく左右するかもしれない。何がその違いを生むのか考えさせられる。

  1. 2008/02/06(水) 22:42:51|
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精神性

2008.02.09 Sat

【2008年17冊目】
生きがいについて (神谷美恵子コレクション)
神谷美恵子 (著) (みすず書房 2000年1月)
★★★★★

弱者へのやさしい眼差し、深い教養、そして透明で心を打つ文体。こういう人物がいたのかと感嘆させられた。同時に、生きがいを失ったあともより強く生きる名もなき人たちの高い精神性に触れることができ勇気をもらった。

私は昔から修行・苦行に惹かれてきた。それは、何か大きな困難を乗り越えて、大きく変貌を遂げるという物語への憧れから生じたものだ。しかし、この本を読んで、言葉では表せない苦境に直面し、乗り越えた人たちを知った。誰に語ることもなく静かに淡々と生きた姿に思いを馳せると、生半可な自分が恥ずかしくなる。

著者の思いは、以下の文章に集約されている。

いったい私たちの毎日の生活を生きるかいあるように感じさせているものは何であろうか。ひとたび生きがいをうしなったら、どんなふうにしてまた新しい生きがいを見いだすのだろうか。(p.4)

「生きがいをうしなう」なんて、日常ではほとんど意識しないことなので、想像が及ばず私は読み流してしまったが、この文章に込められた著者の思いは深い。著者は、ハンセン病患者の治療に一生をささげ、まさにこの二つの問いを生涯にわたり日々考え続けたのだ。

前半は「生きがい」を正面から捉えようとしたものの、圧倒されたのは逆光線で人生を眺め(p.98)ることで、「生きがい」を浮き彫りにしようとした本書の後半部分だった。少なくとも限界状況下にある人間は、もはや文化や教養や社会的役割などの衣をまとまった存在ではなく、何もかももぎとられた素裸の「ひと」にすぎない。限界状況下とは、ハンセン病の患者であり、戦場の兵士、死刑囚、愛するものを失った人、難病を抱えた患者やその親といった人たちのことである。

著者が出会ったハンセン病患者は、はじめ足場がガラガラと崩れ、死刑宣告を受けたかのように感じ、生きていても仕方がない、死のうと思う人がほとんどだという。そこで社会的地位などすべてを剥ぎ取られ、丸裸にされ、孤独のなかで自己と向き合わなければいけなくなる苦悩はいかほどであろう。しかし中には、創造活動に従事したり、他人の優しさや愛に触れたり、あるいは宗教に出会ったりして、新たな生きがいを発見する人も出てくる。そうすると、病気の前よりもむしろ力強く、より深く濃密に生きていくようになるという。

いままで読んできた成功者による成功体験とはまったく異なる。どん底から這い上がり、より深く人生を歩むようになった人たちの静かな語りを代弁した本書は新鮮で強烈だった。

  1. 2008/02/09(土) 23:22:30|
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