保健教育事業、方針の明確化

2006.08.02 Wed

保健教育チームの会議に参加しました。
基本的には、
チームリーダーにマネジメントを任せていますが
一つ気になったことがあって
きょうは1日、時間をもらいました。

気になったことというのは
きょうまでに4日間、
チームの中で話し合いをずっとやっていたようですが
どうも話を難しくしすぎているのではないかということです。

保健教育チームは
村の保健教育ボランティアも含めると
総勢500人以上の大所帯です。
これを束ねて活動するには
明確な方針が不可欠です。
あまり話を難しくしてしまうと
末端までそれが伝わらなくなります。
そればかりか
「二兎を追う者は一兎をも得ず」というくらいですから
三兎も四兎も追っていては
何も成果が上がらなくなるのは火を見るより明らかです。

また明確な未来の絵を描くのは
リーダーとしての務めだとも思います。
わたしがリーダーの器だとは自分では思えませんが
誰かがリーダーの役割を担わなければならず
たまたまわたしはリーダーを演じられる立場にいるので
その責任があると感じています。

いままでは、
トップダウンで方針を示すということに抵抗がありましたが
保健教育事業に関しては、
ここで一つ筋を通す必要があると感じました。
もちろん、わたしが勝手に決めたという印象を薄くするために
答えが参加者の中から出てくるようにはしました。

前置きが長くなりましたが
わたしなりに考えたCDRTの保健教育事業の方針は
「保健教育ボランティアを村のリソースパーソンとして育成する」
というもので
そのために、保健教育ボランティアの能力向上を支援します。

当たり前に聞こえるかもしれませんが
現場ではちょっとした認識の相違がありました。
つまり、
保健教育ボランティアの能力向上に注力するのか
村の保健状態の改善に力を入れるのか
で、意見が分かれていました。

もちろん、最終的な目標は後者ですが
わたしたちの保健教育事業のロジックとしては
保健教育ボランティアによる保健教育を通じて
村人が態度や行動を変容させることによって
村の保健状態が改善される
というものです。
ですから、保健教育ボランティアの育成を飛び越して
いきなり村全体の保健状態の改善を達成しようとすることには
かなり無理があると常々感じていました。

そこでまずは
保健教育ボランティアに全神経を集中させる
という共通認識をチーム全体として持つことが大切と考えました。
これは正しいか間違っているかという問題ではなく
いかに明確な方針を打ち出して
チーム全体がそれに向かっていけるか
という意味でとくに重要です。

実は、この認識は4月の会議でも確認したはずなのですが
それが徹底されていませんでした。
大きな理由としては
それを測る明確な尺度がなかったことではないかと考えました。

保健教育ボランティアの能力向上といいますが
何をする能力か?というと、次の二つを期待しています。
・村人に対する保健教育をおこなう
・それ以外の保健関連活動を村人とともにおこなう

「保健教育」はもともと
保健ボランティアのもっとも基本的な仕事として認識されていますが
それに加えて、村人と協力して
何らかの保健活動が村でおこなわれることを期待しています。
たとえば、
村の清掃活動やごみ処理
子どもたちへの保健教育、家庭訪問などです。

これらを示す明確な尺度として提案したのが
保健教育を含む
「保健活動の種類と数」です。

「種類と数」を指標として使うということは
活動の質自体はほとんど無視しているわけですが
現時点では「何かをやっている」ことが重要であって
質はそのあとの問題、あるいは枝葉と考えています。
それに現場では質を高める努力はおこなっていますので
チーム全体としては、明確な尺度を示すために枝葉を削いで
保健活動の種類と数を指標として使うことにしました。

質が考慮されていないという弱点はありますが
数というのはとても大切な指標です。
たとえば、本当に村ぐるみで保健活動に真剣に取り組んでいるのか
ということもこの指標からある程度知ることができます。

保健教育を含む保健活動は
インフラや生計手段である農業への支援などの活動と比べると
とかく地味で目立つことがなく
村人の関心を集めることが難しいです。
そこで「村薬局を始めるために必須医薬品を支援してほしい」など
安易で注目を集める支援活動に走りがちなのですが
保健に対する村人の意識や関心が低いところで始めても
それが村の保健状態の改善に寄与するかというと疑問で
薬局自体の継続的な運営すらもすぐに危うくなってしまいます。

これは何も薬局に限ったことではなく
どんな活動でもそうであり
CDRTが過去に犯した失敗から学んだ教訓でもあります。

そこでまずは村でできることから始めてもらい
その様子を見ながら
村で芽生えた保健活動を支える一環として
CDRTが支援を行うという形をつくりたいのです<。

とにかく、保健教育チームとしては
このように一本しっかりとした幹ができたことで
全体として目指すところが明確になり
メンバー一人ひとりが活動しやすくなるだろうと思います。

保健教育ボランティアを中心として
どうやって村人たちが保健活動の種類と数を増やしていくかは
現場スタッフの工夫次第ということになります。
試行錯誤を繰り返しながら成功や失敗から学び
今年の終わりまでにはある程度の成果を期待しています。

  1. 2006/08/02(水) 22:05:19|
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ラカイン州への出張

2006.08.07 Mon

カウンターパート機関との会議の日程が再三変更になり
予定が二転三転しましたが
きょうからまたラカイン州へ出張します。

ヤンゴンへ戻ってくるのは8月13日になりますので
それまでブログを休ませていただきます。

先週はブログの更新がまたしても滞ってしまいましたが
現場から戻ってきたら
またみなさんにしっかり報告しますね。

  1. 2006/08/07(月) 23:05:19|
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パイロット事業の経過

2006.08.14 Mon

今回でパイロット事業を目的とした
ラカイン州チャウトーへの出張が3回目となりました。

本当は3ヶ月ごとに現場を訪れてフォローしようという予定で
6ヶ月目にあたる5月に行くはずだったのですが
出張が今月までずれ込んでしまいました。

とにかくも、昨年11月から足かけ9ヶ月
チャウトーにある4つの村で8つの住民組織と関わってきました。
わたしは、この9ヶ月の間で3回しか現場を訪問していませんし
各回に1週間ほどしか滞在していませんので
直接的な関わりはほぼすべて現場スタッフがやりました。

昨年の半ば頃から、わたしのなかでは
住民が村の開発を自分たちの力で進めていけるように
どのような支援ができるかと考え続けてきました。

どんな内容の研修をすればいいのかと
当初は頭を悩ませました。
実際、ほかのNGOや援助機関が出しているマニュアルには
住民組織が有すべき知識・スキルが記載されています。

たとえば、インドのNGO、MYRADAの小冊子には
住民組織が機能するのに必要な特質として
次の6点を挙げています。
- Vision/Mission
- Organisational Management Systems
- Financial Management Systems
- Organisational Accountability Norms
- Linkages
- Learning and Evaluation Efforts
(ASSESSMENT OF COMMUNITY BASED INSTITUTIONS)
MYRADAは、CDRTがモデルとする素晴らしいNGOです。

でも実は、このように内容から入ることには
大きな危険が伴うとわたしは考えています。
カバーする内容に目が向いてしまい
望む結果が何なのかスタッフが忘れてしまうのです。
もっと言うと、研修をしただけで満足してしまうのです。
これについては、また後日書くことにします。

とにかく、わたしが現場で考えながら
たどり着いた答えは単純なものでした。

昨年11月に現場に臨んだときは
ある程度の予想はしていましたが
住民組織のほとんどが機能していないこと
つまり、活動が停止した状態であることを
はっきりと認識しました。

そして、機能していない理由は
住民組織のメンバーにあるというよりも
CDRTの支援の仕方にあるとも思い至りました。

住民に組織を設立してもらったものの
その目的はCDRTの支援を実施するためであって
村の開発を継続して進めるための組織であるという意識が
スタッフの間で完全に抜け落ちていたのです。

ですから、極点な話
CDRTの支援が終わったら
住民組織も終わりということです。

そこで、大きく方向転換する必要を感じ
パイロット事業を立ち上げることを決意しました。

ただ、話はそんなに大げさなことではありません。
住民組織のメンバーが自分たちの目標を明確にし
その目標を実現する行動を計画するために
スタッフが一つひとつの組織に対して
問いかけを中心にした話し合いをおこなうというものでした。

そして、目標と計画が明らかになった後は
住民組織のメンバーが計画した行動を起こせるように
スタッフがフォローしてちょっとだけ後押しをするという、
たったこれだけのことです。

たったこれだけのことなのですが
9ヵ月が経過した現在
支援した住民組織の多くが
変化を遂げつつあります。

もちろん、パイロット事業の対象とした
すべての組織が変わったわけではありません。
また、変化が起こったとはいえ
いまはまだまだとても小さなものです。

でも、この9ヶ月間、
8つの住民組織の活動をフォローしてきて
わかったことが二つありました。

一つは、明確な目標を設定できれば
多くの住民組織はそれに向かって動き出すということ。

もう一つは、いったん動き出せば
行動することで自信が深まるということ。

ここまではよいのですが
問題はそう単純でもないでしょう。
8つの住民組織のうち3つはほとんど動いていませんし
行動を始めた5つの住民組織も
これから必ず困難にぶつかるでしょうから
そのときにどうやって困難を乗り切ることができるのか。
このあたりもまたこれからの課題となりそうです。

  1. 2006/08/14(月) 23:05:19|
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自立発展を支援する戦略

2006.08.15 Tue

現場スタッフとの議論や
住民組織のメンバーたちとの関わりから
まさに現場からたたき上げて
自立発展を支援するExit Strategyをつくりました。

まだまだ多くの仮説を含む戦略ですが
とにかくまずは動き始めることにします。
そして、走りながら修正を加えていきます。

この戦略は4段階からなります。
1.タネまき
2.選択
3.集中
4.普及

第一段階は、目標を明確にして行動の計画を立てる
住民自身が目標を実現するための「プロジェクト」を
タネとして住民組織の一つずつにまきます。

2、3ヶ月もすると、タネから芽が出るかどうか
つまり、目標に向かって本当に行動するかどうか
彼らの真剣度を見ることができます。

この間の各住民組織の活動状況を踏まえ
第二段階では、継続してフォローする組織を「選択」します。
CDRTが選択するとはいいますが
実際には、やるかやらないかを決めるのは住民なので
住民自身がその後の方向を選択しています。
わたしたちはその動きを見て
こちらの動きを決めているだけです。

もちろん、この決定をある一時期だけを見てするのではなく
継続したプロセスの中で考えていますので
住民がやる気になればいつでも喜んで支援します。
それまでは、多少の後押しをしたり、励ましたりしますが
基本的には「待つ」というスタンスを貫きます。

このようなスタンスをとるのは、いままでの経験から
すべての住民組織が一様に村の開発に関心があるわけではなく
(村の開発以外の思惑で組織化された住民組織が多い)
したがって一斉に行動を開始することはできないと学んだからです。

第三段階の「集中」では
頻度をより多くして選択された住民組織をフォローします。
まだどのような方法でフォローするかは決めていませんが
研修などを織り交ぜておこなうと思います。
また、計画がある程度進むと必ず壁が出てくるでしょうから
ときにはスタッフが問題や課題の発見を促し
解決策や対策を練るお手伝いもすることになると思います。

そうなると、スタッフにはさらに高い技能が求められます。
何よりも、自分の頭で考え、判断することが必要でしょう。
スタッフの現状を考えると、
これはかなり挑戦しがいのある課題です。

また、この戦略の大きな特徴としては
研修を第三段階までおこなわないことです。
これもまた、いままでの経験から得た教訓です。
いままでのやり方というのは
住民組織にはこれこれの知識やスキルが必要だと決め付けて
個々の特質や置かれた状況をあまり考慮することなく
一斉に同じ内容の研修を提供してきました。
いわば、工場で製品を作ろうとするようなものです。
結果として、研修したことが活用されないということが
往々にして起きていました。

人は、自分の関心のあることしか学ぶことができません。
自分たちには何が足りなくて、
何を学べば活動がうまくいくのか
まずは行動を通じて考え、気づいたところで
住民自身が必要と考える研修を提供します。
こういう過程を踏むことで、
彼らの関心や熱意には雲泥の差が出ます。

第四段階では、しっかりと根を張った住民組織が
周辺によい影響を及ぼすことを期待しています。
村の人たちにとってもっとも説得力があるのは
自分たちと同じ境遇の人が成功するのを見ることです。
ですから、周りに成功した住民組織が出現すると
それに触発されて、「よし次はうちの番だ!」
となることを期待しています。

ほかには相互訪問や意見交換会など
CDRTとして支援できることも考えてはいますが
まだまだ具体的なアイデアは少ないです。
とにかく、お互いに刺激しあい、学びあう場を提供することが
この段階では重要になるだろうと考えています。

今回の出張では
いままで現場でフォローしてきた4人のスタッフと議論した結果
この戦略でいこうという結論に達することができました。
数にすると50以上ある住民組織のうち、
いくつが第二、第三、そして第四段階まで進んでいくのか
不安でもあり、楽しみでもあります。

チャウトーへの次の出張は11月を予定しています。

  1. 2006/08/15(火) 22:05:19|
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自立発展の尺度

2006.08.16 Wed

ある住民組織が、
村での開発活動を計画・実行できるようになった
と、どうしたら判断できるのでしょうか?

Understanding by Designという本を読みました。
これは教育の現場で生徒の「理解」を促すには
どうやってカリキュラムや授業を設計(デザイン)するか
について書かれています。
(「理解」の定義がかなり細かく、
 これがこの本のひとつのポイントになっています)

提唱されているのは
「さかさまデザイン(Backward Design)」という方法です。

「さかさまデザイン」の手順は
望む結果を明確にしたあと
すぐにその実現方法を考えるのではなく
まず評価者の立場で
実現した状態を示す「証拠」を明らかにします。
ここが従来の計画手法とは大きく異なる点です。

考えてみれば、すごく当たり前のことなのですが
何が目標達成の証拠となるかについて
わたしたちは十分に考えていないように思います。
証拠となるものが見えていなければ、評価はできませんし
評価ができなければ、目標は達成できません。

面白いことに、ちょうど同じ時期に
「最高のリーダー、マネジャーが
 いつも考えているたった一つのこと」
(マーカス・バッキンガム著 日本経済新聞社)
というビジネス書を読みました。
そこにも、明確な「尺度」を示すことが
リーダーに求められる大切な仕事として挙げられています。

例としては、ニューヨーク市長であったジュリアーニ氏が
犯罪率という明確な尺度を使うことで
ニューヨークの犯罪率を低下させただけでなく
この大都市に、かつての活気を取り戻すことに成功しました。

「核となるひとつの尺度に注目することによって
 人々に明確な目標を示した (中略)
 この明確さが人々により大きな自信と、
 創造力と、根気強さと、活力を与えた」p.195

住民組織でもこの考えを当てはめてみました。

望む結果は
住民組織が村の開発活動を計画・実行できる
ということです。

では、その証拠は?
さて、住民組織の成功を測る尺度とは何か?

わたしが考えた「たった一つのこと」は
「目標達成」です。

ある住民組織が
「メンバー自身が立てた目標を達成したかどうか」
を測ることで、
住民組織の自立発展度がわかると考えました。

これに加えて
・目標
・行動
と、合計三つの尺度を
わたしは提案しています。

これだけでは尺度にはならないので
ルーブリックという
教育でよく使われている評価基準表を使います。
それはこんな感じです。

項目 すごい(2点) よい(1点) もう少し(0点)
目標 明確な目標があり、具体的、計測可能、かつ期限を示した指標がある目標は明確だが、指標が抽象的、計測困難、あるいは期限が不明明確な目標あるいは指標がない
行動ほぼ計画どおり、ほとんど全ての活動を実行している実行された活動が限られている計画した活動をほとんど実行していない
目標
達成
目標を達成した目標の下のステップを達成した、あるいは達成しつつあるどのステップにも近づいていない

ここまで単純化することで
CDRTという組織で働くすべてのスタッフが
この尺度の改善に向けて力を集中させることができます。
尺度が10個もあったとしたら
スタッフは混乱し、不安になり、
力を無駄に使い、自信を失うでしょう。

たとえば、住民組織にとって大切なこととしては
二日前に書いたMYRADAのSix Featuresなどがあります。
これらは確かに大切なことですが、あくまでも枝葉です。
要は、目標を達成できるかどうかが
住民組織が機能しているかを示すのです。

これら三つの項目を使って
パイロット事業の対象にした8つの住民組織を評価すると
5つは各項目で1点ずつとり合計3点
残りは合計、2点、1点、0点です。

気をつけなくてはいけないのは
この評価は決して
住民組織相互を比較するものではないということです。
尺度を使うことで、現状を認識して
将来、よりよい状態にもっていく必要性を感じるのが目的です。

また、将来的にはこの評価基準表を
住民組織のメンバーたちと一緒につくりたいとも考えています。
学ぶために最も効果的な方法は自己評価ですから
評価の基準を考え、自分で評価することで学びが深まります。
そして、自分の立ち居地が分かって初めて
目的地への距離が分かり
いま何をすべきかを考えられるようになるというものです。

  1. 2006/08/16(水) 23:05:19|
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