二宮金次郎の言葉

2007.01.02 Tue

【2007年1冊目】
現代語抄訳 二宮翁夜話〜人生を豊かにする智恵の言葉
二宮尊徳(口述)福住正兄(筆記)渡邊毅(編訳)
(PHP研究所 2005年2月)

二宮金次郎(1787-1856)の言葉や活動を
弟子の福住正兄が書き留めた言行録である。
原著は全5巻と続編で構成され全部で281話が納められている。
本書はうち104話を現代語に訳したもので10章からなる。

編訳者は中学校の先生で
他にも道徳に関する著書がある。
不登校、ひきこもり、自殺、少年犯罪など
道徳教育の欠如が人心の荒廃をまねいているとしている。
同じような問題に直面したのが明治初期。
その克服に大きく貢献したのが金次郎を扱った教材であった。

「かりの身を 元のあるじに 貸渡し
 民安かれと 願ふ此身ぞ」p.43

金次郎がその覚悟を詠んだ歌である。
この世に生を受けた身は、仮の身である。
わが身とは思わず天のために捧げる。
生涯一筋に、世のため人のためのみを思い
国や天下のために役立つことのみを勤める。
その激烈な覚悟には感服する。

金次郎は農村復興のために下野桜町(栃木県)へ移り住むとき
小田原藩にある自分の家財全部を処分して臨んだ。
それほどの覚悟がなければできない事業と心得ていたのだろう。
こうして金次郎はのちに約600村の復興を手がけた。

金次郎の話は農民にわかりやすい例を引いて語られる。

己の中には、私欲がある。
私欲は田畑にたとえれば、雑草だ。
「克つ」とは、この田畑に生える雑草を取り除くことをいう。
したがって「己に克つ」というのは、
自分の心の田畑に生える草を取り除いて、
自分の心の米や麦を繁茂させることに励むことなのである。p.38

このように金次郎は
「心の田」を開拓することに重きを置いたようだ。

[荒地や借金などの]「荒蕪」のもとは、
心の田の「荒蕪」によるものなので、
私の道は、まずこの心の田の「荒蕪」を
開拓することを優先させている。p.239

また小さなことを積み上げて事を成すということは
「積小為大」という。

百万石の米といえども、
米粒が特別大きいわけではない。
万町歩の田を耕す場合でも、
その作業は一鍬ずつの仕事からである。p.48

金次郎の仕法の基本は、勤労、分度、推譲である。

私の道は、勤・倹・譲の三つである。
勤とは、衣食住になる物を一所懸命に生産することにある。
倹とは、その生産したものを浪費しないようにすることをいう。
譲とは、この二つを他に及ぼすことをいう。p.251

「勤労」

富と貧を分ける根本は、ただ一つの心得にある。
貧者というのは、昨日のために今日勤め、
昨年のために今年勤める、ということをするから、
いつまでも苦しんで成功しない。p.134

世の人は今日飲む酒がないときは借りて飲み、
今日食う米がないときもまた借りて食う。
これが、貧窮する原因なのだ。p.134

「分度」

私の復興事業の方法は、
分度を定めることを基本にしている。
この分度を確立して、これを厳重に守れば
荒地や借財がどれだけあっても、
何も恐れたり心配したりすることはない。
私の富国安民の方法は、
分度を定めることの一点にかかっている。p.165

「推譲」

人たる者は、智恵はなく、力は弱くても、
今年のものを来年に譲り、他に譲る道を知って、
それをよく実行すれば、
その努力は必ず報われるのである。p.170

どんな良法・仁術といえども、
村中で一戸の貧者も出さないというのは、難しいことだ。
(中略)
前世の因縁もあって、これはどうすることもできない。
このような貧者は、ただその時々の不足を援助してやって
どん底に落ちないようにしてやることだ。p.67

金次郎の農村復興の仕法には
現代でも十分に通用する考えが多い。

秤のつりあいのようなもので、
左が重ければ左に傾き、右が重ければ右に傾くのと同じだ。
村内に貧しい家が多ければ村全体が貧困に傾き、
悪が多くなれば悪に傾く。
だからお互い、恥というものがなくなる。
その反対に富裕な家が多ければ富裕に傾き、善人が多ければ善に傾く。
だから、恥というものが生じるし、正義心も生じてくる。
よくない風習を改め、村を復興する事業は、
この機会をおいて他にはない。p.66

村を復興しようとすれば、必ず抵抗する者がいる。
これに対処するのもまた、この道理である。
決してこれにとらわれて気にしてはならない、
妨げられてはならない。
気にせずに放っておいて、自分の勤めに励むべきだ。p.57

世間では、救済に志のある者は、
よく考えもせずに金品を施し与えることがあるが、これはよくない。
なぜなら、それによって人々を怠惰に導くからだ。
恵んでも減らさないように注意して施し、
人々が心を奮い立たせ、
努力して困難に立ち向かえるようにすることが必要である。p.190

私の道に従事して刻苦勉励して国を興し、
村を興し、人々の困窮を救うことがあったときでも、
必ず人々が「報徳仕法の力を少しも借りていない」と歌うはずである。
そしてこのときこれを聞いて、
喜ぶ者でなければ、わが一門の人間ではない。p.225

私の道は、至誠と実行があるのみだ。
私は才智・弁舌を尊重しない。p.147

この最後の言葉どおり
金次郎の強さはなんといっても
いったことを自ら実行する誠の心にあると思う。
本書は一度読んだだけでは
なかなかその深さを理解できない1冊だ。
何度も読み返し、実行し、
少しでも偉大な先達に近づきたいものだ。

  1. 2007/01/02(火) 12:20:00|
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歴史的指導者

2007.01.10 Wed

【2007年4冊目】
[新装版]指導者の条件
松下幸之助 (著)(PHP研究所 2006年2月)

いわずと知れた日本を代表する経営者、松下幸之助。
本書では、経営や政治などの指導者へのメッセージが
102のテーマで収められている。

各テーマでは
古今東西の歴史的指導者の逸話のあと
松下が自身の解釈や感想を付け加えている。
物語がまずあるので、メッセージがすっと心に入ってくる。
もちろん松下の解説もすばらしい。

以前にも読んだことがあったが
今回読んでみて別の箇所に目が向いた。
いま自分の置かれた状況からだろうか
指導者としての「きびしさ」に強く惹かれた。

梅若実という能の名人の師匠は
何をやれとはいわず、ただ「できるまでやれ」とだけ言いつけ
ひたすら繰り返し修行を積ませた。

源頼朝が、大軍を率いて馳せ参じた上総介広常に
むしろ遅参したことを強く詰問した。
頼朝は当時まだ弱小ではあったが、
何が正しいかという見識を持っていた。

秦の商鞅という大臣は、相手がたとえ太子であっても
法を犯したことを例外として扱わない公平さを示した。

三菱の創業者、岩崎弥太郎は
ある幹部が私用の休日申請に
会社の用箋を使ったということで減俸にした。

諸葛孔明は「泣いて馬謖を斬る」ことで
信賞必罰の態度を明確に示した。

戦に望んで、人事を尽くし必勝を期した武田信玄。
敗因はすべてわれにあり、と。

処刑を目前に控えても、友人による逃亡の手はずを拒否し
国法を守り正しく生きるという、みずからの教えを
自分の命を捨ててまでも、身をもって範を示したソクラテス。

そうした厳しさ、見識、公平さ、けじめ
改めて、みずからを省みる。

次に目を通すときには、また違った面が見えるのか
何度も楽しめる奥深い一冊である。

  1. 2007/01/10(水) 19:43:00|
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道をひらく

2007.01.25 Thu

【2007年6冊目】
道をひらく
松下幸之助 (著) (PHP研究所 1968年5月)

自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。p.10

志を立てよう。自分ためにも、他人のためにも、そしておたがいの国、日本のためにも。p.15

ちがうことをなげくよりも、そのちがうことのなかに無限の妙味を感じたい。無限のゆたかさを感じたい。そして、人それぞれに力をつくし、人それぞれに助け合いたい。p.21

人生は真剣勝負である。真剣になるかならないか、その度合いによってその人の人生はきまる。p.23

自分の周囲にある物、いる人、これすべて、わが心の反映である。わが心の鏡である。p.39

君子は日に三転す。p.45

それがよいことであればあるほど、そしてそれが正しいと思えば思うほど、まず何よりも辛抱強く、根気よくつづけてゆく心がまえが必要であろう。p.100

人と人が相寄って暮らしているこの世の中、どんなことに対しても、自分は全く無関係、自分は全く無責任―そんなことはあり得ない。一見何の関係もなさそうなことでも、まわりまわってわが身につながる。つながるかぎり、それぞれに深い自己反省と強い責任感が生まれなければならないであろう。p.213

学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である。
語らぬ木石、流れる雲、無心の幼児、先輩のきびしい叱責、後輩の純情な忠言、つまりはこの広い宇宙、この人間の長い歴史、どんなに小さなことにでも、どんなに古いことにでも、宇宙の摂理、自然の理法がひそかに脈づいているのである。そしてまた、人間の尊い知恵と体験がにじんでいるのである。p.217

  1. 2007/01/25(木) 16:02:00|
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つながり

2007.02.17 Sat

【2007年13冊目】
ハイエスト・ゴール
マイケル・レイ (著) 鬼澤忍(訳)
(日本経済新聞社 2006年2月)

自己啓発オタク、とまではいかないが、かなり好んで自己啓発書を読んでいる。中学生のころは、理解もできないのに背伸びをして三木清の「人生論ノート」やトルストイの「人生論」を手にとった記憶がある。しかし、内容はおろか、読み終えたのかすらもさっぱり覚えていない。

きょう紹介する本は、スタンフォード大学のMBAでの授業として教えられていた「創造性開発コース」の内容を中心にまとめたものである。著者の教え子の顔ぶれは層々たるもので、イーベイの創業者などが並ぶ。さらに、本書の序文は「ビジョナリーカンパニー」のジム・コリンズが書いている。「あやしげな」授業の初日、冒頭でいきなり瞑想が始まり、コリンズは「失敗した」と思ったそうだ。しかし、続けて授業を受けたことで彼は生涯にわたる財産を得た。「そのコースをとらなければ、私がこのすばらしい人生を与えられ、今いる場所にたどり着くことはなかっただろう」と。

本書を読むと、内容が「自己啓発の本」と酷似していることに驚く。これが「創造性」を高めるMBAコースだったとはにわかには信じられない。しかし、創造性とは人間の中から、あるいは間から生まれてくることを考えると、人間の内面をとことん突き詰めていくことで、創造性が高まるのも納得できる気はする。わたしもこの考えに大いに賛成で、だからこそスタッフ研修にも村での寄り合いでも、目標を定めるということに重点を置いてやってきた。もちろん、目標を達成するために行動することが前提ではある。

この本が面白いのは、そのタイトルとは裏腹に、ゴールについてはあまり触れていないことだ。触れているのは、イントロダクションの十数ページといったところか。最高のゴールとは何か、ということについても掴みどころがない。それは、著者が最高のゴールを見つけることを「旅」としているからだと思う。

その旅のガイドとなるのが、本書で紹介されている「生活の指針」だ。
1.情熱と成功を乗り越えよう
2.自分自身の道を歩もう
3.最高のゴールとともに生きよう
4.真の成功を見いだそう
5.不安を突破口に変えよう
6.心で他人とかかわろう
7.あらゆる瞬間にシナジーを感じとろう
8.生産的なリーダーになろう

これだけではよくわからないだろうが、これらの指針の説明が本書の中核をなす。著者は、一つひとつの生活の指針を1週間以上実践することを勧めている。ベンジャミン・フランクリンの13の徳目を思い出した。実践しながら、その中で経験したことを書きとめておく。そうすることで、経験を自分のものとするのだ。

掲載されていた指針の中では、たとえば「心で見る」、「イエスかノーか?」、「与え、受けとる流れに乗れ」などに惹かれた。でも、もっとも気になったのは「生活の指針を自分で書き加えてみよう」だ。指針を自分で立てて実践することで、何かが見えてくるのか。見えてくる気もする。実行あるのみ、といったところか。

  1. 2007/02/17(土) 23:16:00|
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実行に移す

2007.02.18 Sun

【2007年14冊目】
3週間続ければ一生が変わる
ロビン・シャーマ (著) 北澤和彦(訳)
(海竜社 2006年2月)

魅力的なタイトルだ。わかりやすく、その気にさせられる。実際、単純なわたしは、仕事場の整理整頓や早起きの習慣などを身につけようと、つい最近一念発起し、3週間続ければ本当に一生が変わるのかなあ、と思いながら続けている。ちなみに、原題は、"Who will cry when you die?"である。

昨日に引き続く自己啓発書である。どんな本でもそうだが、いくら価値のあることが書いてあっても、それを実行に移さなければ何も意味がない。その実行という観点からいうと、本書はすばらしい。実行に移しやすいように配慮がなされている。内容は平易だし、たくさんの良質な引用があり、文字が適当に大きく読みやすい。構成はひとつのメッセージに2、3ページを割いて、全部で101のメッセージが収められている。

また、著者の本の嗜好にも共感を覚えた。セネカやマルクス・アウレリアス、ベンジャミン・フランクリン、ラルフ・ウォルドー・エマソンなど、古典に注目しているところがいい。とくに、109ページにあった12冊のおすすめ本は読んでみたい。

紹介されているこれらの本を読む以外にもわたしが実行してみようと思ったのは、

・最初の21日間を乗りきる
・一日のはじめに"プラチナの三十分"をもつ
・人生で犯した大きなあやまちを10個、学んだ教訓と人生にもたらされた恩恵を書き出す
・理想の隣人リストをつくる(モデリング)
・心が元気になる言葉を繰り返し唱える
・英知を与えてくれる本を読む
・「集中的な読書」。心がページを離れたら余白にチェックマークを書き入れる。
・引用句を集める。よく目を向ける場所に張っておく。
・「ヒーローリスト」をつくる(死ぬまでにぜひ会ってみたい100人)
・日々の行動規範(価値、徳、誓約)をつくり、それに沿って生活する
・職場環境と住環境を向上させる対策を講じる

少し気になったのは、日本語版では101あるメッセージを10のテーマに分類して原著の順番を並び替えていること。これは著者の意図とは異なるのではないか。テーマでまとめてわかりやすくなったのかもしれないが、そのぶん一つひとつのメッセージのインパクトが弱くなっている気がする。バラバラであれば、忘れたころに似たような話をまた読んで、さらに理解を深めるということがあるのではないか。脳の機能からいうと、少し時間を置いて消化してからのほうが吸収がよくなるように思うのだが。

  1. 2007/02/18(日) 10:31:00|
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